Dowは、どの仕事にAIを使ったのか
Microsoftが2024年11月19日に掲載した事例によると、DowはMicrosoft 365 Copilotを使い、輸送運賃、計上した費用、請求書の金額を交渉済みの条件と照合しています。食い違う箇所を見つけ、担当者による確認や修正につなげる取り組みです。
同じ事例では、Copilot Studioで作る仕組みが、メールで届くPDF請求書を処理し、不一致を修正の工程へ振り分けることも紹介されています。AIだけで契約の解釈や支払いの承認まで完結させる、と読み替えないことが大切です。
数百万ドルは、当時の削減「見込み」
原典にある初年度で数百万ドルという金額は、輸送業務で見込む費用削減です。この記事では、実現した削減額として扱いません。原典掲載後の達成状況も、ここでは確認していません。
以下はAtlas Supportの考察です。大企業の見込み額を、自社の削減率や投資回収の根拠にはできません。まず確認したいのは、自社で月に何件を照合し、どれだけ時間を使い、どんな差異が見つかっているかです。
日本の中小企業なら、どこから試すか
ここからは、Dowの導入内容ではなく、Atlas Supportによる検討例です。最初は、取引先や請求の種類を一つに絞り、人が確認済みの過去の請求書で試します。件数は、担当者が全件の答え合わせをできる量にします。
たとえば、契約上の単価と請求書の単価、数量、適用期間を並べ、合わない項目とその根拠をAIに示させます。差異の一覧だけでなく、請求書の何行目と契約のどの箇所を見たのか、担当者が戻って確認できる形にします。
単純な計算や同じ形式の数字の照合なら、表計算や既存の会計ソフトで足りる場合もあります。書式が異なる文書を読む部分など、AIを使う理由がある仕事を選びます。
始める前に決めておく、6つのこと
便利な道具を選ぶ前に、資料、確認担当者、例外の扱いを決めます。次の表は、自社で検討するための確認項目です。
| 確認すること | 具体的に決めること |
|---|---|
| 契約・請求データ | 有効な契約書、運賃表、変更合意を揃える。適用日や取引先が分かる状態にする。 |
| 機密情報 | 入力してよい情報、利用先の保存・学習条件、閲覧権限を確認する。初回は必要な項目だけに絞る。 |
| 例外処理 | 追加料金、契約変更、資料不足は『要確認』に戻す。不明な条件をAIに補わせない。 |
| 人による承認 | AIの読み違いや見落としを前提に、担当者が原本と照合する。修正・支払いの承認は権限を持つ人が行う。 |
| 少量での検証 | 正常な請求と差異のある請求を含め、人が全件を確認する。指摘の誤りと見逃しの両方を記録する。 |
| 費用対効果 | 資料の準備、確認、修正にかかる時間も測る。初期費用と月額費用を含めて続ける価値を判断する。 |
効果は、確認時間と誤りの両方で見る
同じ請求書を使い、従来の方法とAIを使う方法を比べます。AIの処理時間だけでなく、人が根拠を確認し、誤りを直し終えるまでの時間を測ります。
さらに、見逃した差異、誤って指摘した件数、判断できず人に戻した件数を残します。確認が速くなっても、重要な見逃しが増えるなら、そのまま範囲を広げる判断はできません。
短縮した時間は、そのまま現金の削減額にはなりません。請求額の訂正が必要か、実際に支出が減ったかも別に確認します。契約上の争点や会計処理は、担当者や必要な専門家が判断し、AIだけで代替しない運用にします。
自社での使い道を、一つの業務から考える
検討の出発点は、『AIで何でもできるか』よりも、『毎月どの確認に時間を使っているか』です。月間件数、現在の確認手順、困っている例外が分かると、試す範囲を具体化できます。
請求書の確認を、自社でも効率化できるか
Atlas SupportのAI顧問は、AI活用の優先順位、費用対効果、推進体制の判断を支援します。まずは対象業務と検討したいことをお知らせください。問い合わせ時に契約書や請求書の原本を送る必要はありません。
請求書と契約の照合にAI