最初に見るべき結論
Palantirの製品文脈でいうOntologyは、組織のデジタルな業務モデルです。データセットやモデルを、業務上のオブジェクト、プロパティ、関係、アクション、ロール、ワークフローへ対応づけます。
これは、単なるデータカタログやDBスキーマとは違います。DBは顧客、注文、資産、イベントを保存できます。一方でOntologyは、それらが業務上何を意味し、どう関係し、誰が何を操作できるかまで扱います。
AI導入で重要なのは、AIエージェントに作業させる前に、扱う対象、参照してよいデータ、実行してよい操作、守るべき権限、残すべき証跡を定義することです。
PalantirがいうOntologyとは何か
Palantir Foundryの公式docsでは、Ontologyは統合されたデータセットやモデルの上に置かれるセマンティックレイヤー、または組織のデジタルツインとして説明されています。構成要素には、object type、property、link type、action typeがあります。
object typeは、航空機、サプライヤー、注文、患者、契約、設備、問い合わせなど、業務上の実体やイベントを表します。propertyは特徴、link typeは関係、action typeはユーザーやシステムが変更できる操作を表します。
Palantir AIPの文脈では、このOntologyの上にAIワークフロー、AIエージェント、関数、アプリケーションを構築し、セキュリティ、監査、ガバナンス、業務文脈を接続する考え方になっています。
既存のデータ概念との違い
一般的なDBスキーマは、保存と検索のために設計されます。データカタログは、データセットを探すための仕組みです。ダッシュボードは、選ばれた指標を表示します。RAGは、モデルに渡す文書やチャンクを検索します。
Ontologyは、より業務そのものに近い場所にあります。実体、関係、操作、権限、アプリケーションをつなぎ、人やAIエージェントが情報から管理された業務操作へ進めるようにします。
これは、すべての企業がPalantirや大規模基盤を導入すべきという意味ではありません。エンタープライズAIには、文書とAPIを集めるだけでなく、業務を共有モデルとして定義する必要がある、という示唆です。
| 概念 | 主な役割 | 抜けやすいもの |
|---|---|---|
| DBスキーマ | 構造化データを保存・検索する | 業務操作、所有者、運用文脈 |
| データカタログ | 利用者がデータセットを探せるようにする | ワークフロー上の振る舞いと許可された操作 |
| ダッシュボード | 指標や推移を表示する | 判断ロジック、書き戻し、フィードバックループ |
| RAGインデックス | モデルの文脈としてテキストを検索する | 業務オブジェクト、権限、操作境界 |
| 業務Ontology | データ、意味、操作、ロール、ワークフローをつなぐ | 所有者と変更管理を丁寧に設計する必要がある |
AIエージェントで重要になる理由
AIエージェントは、明確な業務モデルなしにデータ参照やツール実行ができる状態になると危険です。誤った情報源を参照する、似た対象を混同する、文脈の違う操作を実行する、後から検証できない出力を作る、といった問題が起きます。
Ontology的なレイヤーがあると、エージェントが扱う対象を絞れます。定義済みのオブジェクト、承認済みの関係、許可されたアクション、ロールベースのアクセス、何が起きたかを説明するログの上で動かせます。
これは人間にも効きます。サポート、営業、運用、経営、AIエージェントが同じ顧客、契約、資産、インシデント、エスカレーション状態を見ていると、レビューと改善が進めやすくなります。
大規模基盤を真似せず、考え方を使う
小さな会社でも、Ontologyの考え方は使えます。まず、問い合わせエスカレーション、営業準備、フィールドサービス、契約レビュー、社内ナレッジ検索など、1つの業務を選びます。
次に、その業務に必要なオブジェクト、プロパティ、関係、操作、ロール、証跡を定義します。問い合わせ対応なら、顧客、製品、問い合わせ、規程、回答案、エスカレーション理由、レビュー判断が候補になります。営業なら、アカウント、商談、会議、提案、ステークホルダー、リスク、次アクションが候補です。
最初の実装は小さくて構いません。DB、CRM、文書ストア、ワークフローツール、AIアシスタントの組み合わせでも、実体、権限、許可操作、監査イベントを明確にすれば、Ontology的な設計になります。
| 層 | 確認する質問 |
|---|---|
| オブジェクト | その業務が依存する実体やイベントは何か |
| プロパティ | 判断、ルーティング、レビューに必要な項目は何か |
| リンク | 顧客、資産、問い合わせ、文書、注文、タスクはどう関係するか |
| アクション | ユーザーやAIが何を作成、更新、承認、エスカレーションできるか |
| 権限 | 誰が何を見られ、誰がどの操作をできるか |
| 証跡 | 情報源、プロンプト、ツール実行、レビューコメント、操作ログの何を残すか |
次の一歩
AIエージェントを検討するなら、まず1つの業務のOntologyを描きます。モデルや自動化を選ぶ前に、対象、関係、操作、権限、レビュー点を名前付きで整理します。
これにより、AIプロジェクトの範囲が決めやすくなります。また、AIが何を知り、何を実行でき、人間がどこで責任を持つかが見えるため、リスクも話し合いやすくなります。
エージェントの前に、業務モデルを設計する
Atlas Supportは、1つの業務をオブジェクト、関係、操作、権限、レビュー点へ分解し、AIエージェント開発の実装計画へ落とし込みます。
