今年の所得減少が将来の予算まで変えるか
収入が一時的に減った家計は、翌年以降の収入が戻る見通しをもとに、手元資金で当面の支出をつなげるかを考えます。減少が続く場合は、将来に使える所得の見通しも下がります。観察された今年の減少額が同じでも、どの時点の消費を調整するか、どの程度の備えが必要かは変わり得ます。
所得変動の尺度だけでは、一時的な変動と長く残る変動の内訳は分かりません。家計の資産形成を理解するには、ばらつきの大きさと、ショックの影響がいつまで残るかを別々に考える必要があります。
所得変動の大きさをそろえて七つの構造を比べる
日本の公表所得統計を参照し、所得の残差変動の尺度を共通にした七つの所得過程を比べます。変えるのは、変動の持続性、一時的・持続的なリスクの構成、変動の分布です。モデルの家計は25歳から退職後まで、消費、貯蓄、株式市場に参加するか、資産をどう配分するかを選びます。
株式市場には参加と保有の費用があるため、資産をどれだけ蓄えるかと、その資産をどう配分するかは別の判断です。貯蓄の増加によって参加費用を負担しやすくなっても、参加した家計が株式に多く配分するとは限りません。
資産額の差はモデルの条件付きで読む
金融条件をそろえ、持続性を変えた三つのケースでは、40歳時点の平均金融資産が716万円から1,509万円まで異なりました。所得変動の尺度を合わせても、同じ資産形成の経路が得られるわけではありません。影響の現れ方は年齢や、貯蓄、株式市場への参加、参加後の配分のどれを見るかによっても変わります。
この幅は設定したモデルの中での比較です。日本の家計の所得過程や選好を直接推定した数値ではありません。比較が示すのは、一つの所得変動指標を合わせたことだけでは、家計の備え方まで説明できないという点です。